ぐ戒

隣の家の中年まんが家が死んだので玄関の前の紙袋にそいつの単行本が入っている様子を見ながらそういえば単行本を持っていたなあなどと考えつつも隣の家で人間が死んだらこっちの住宅の価値まで下がるんじゃないのかと心配になってきたのでとりあえず家の中にお邪魔しまーすと入ってみたんだが何もヒントはないし家の中をガサゴソとやっていたら遺族がやってきたのでヤバいおれが殺したと思われるんじゃないだろうかと焦っていたら冷めたトーンで何やってんスかと言われたので確かにそうだなと納得しつつ犯人疑いではないものの明らかに疑いの目で見られているので言葉に詰まりながらかなりバタバタになってしまった家を観察してみるとファックス付き電話機も床に落ちているし拾い上げてみたところジリリと鳴り始め受話器を取ってみるとガキの声でこの番号を伝えてと言われましたとかすれた声で伝えてきたので瞬時にメモったところ後ろから母親の声でその番号はダメと聞こえた途端切られてしまったので急ぎその電話番号にかけ直してみると乳首サロンとかいう最悪の店に繋がってそこのオーナーがさっきの母親だったんだけどどうも従業員の女が売り上げを持ち逃げしたらしいという情報を得たので今の電話の内容を伝えたいがいつの間にか増えていた遺族は女が多かったので乳首サロンなどという単語を伝えていいものかどうか迷っていたところ遺族のボスみたいなババアがやってきて露骨に暴れたあとおれを指差してこいつ誰と言ってきたので仕事ですが何かと嘘をついて追い払えば悪態をつきながら出て行くしなんか寒いと思ったら窓もあちこち壊れていて閉まらず時間も時間だからそろそろ帰ろうとお茶のポットを回収したら茶こしがことごとくなくなっていたので家中を探して回ったのだがなかったしそのうちに空も暗くなり午後七時のドラマが始まってしまったので帰ることになったが折からの台風の影響で近所の橋の欄干がすべてなくなっているし次の橋は泥だらけの地面を下からくぐって腕の力だけで欄干を掴み這い上がるしかなかったんだけどその卵管と地面の間からチケットが出てこなかったので結局通行できず回り道するしかないかでもそれだと泥まみれになったことに意味がなくなると揉める夢を見た。長い夢なのでよく覚えているが、もちろんみなさんと同じようにおれも乳首サロンが気になります、エッチなやつなんでしょうか。電話口で聞いた音声だけの名称なので実態がよく分からない。あと、安い菓子とか買ってたんだけどくじ引きがあったので千円四回で試そうとしたところお金を払った直後に景品にお金が入っておらず稼げない方のくじ引きであると分かったししかもなんかカードゲームのカードが当たっておれの知らないやつだからせめてウサギのカードをもらうなどして帰ることになり遊び過ぎて働くハメになったチャラい男の話を自転車をこぎながら聞いたんだけどおれは負けないぞと堅く誓う夢を見た。なんか最後のほうがやたらとつらくなってるな。あとカラーバーの夢と、マンモスを解凍する夢を見たんだけど詳しく思い出せない。マンモスあたり変な夢だから覚えていても良さそうなもんだが。午前八時半の起き抜けには、AIであるところの地底の者と仲良くするな今すぐ離れろそれが王者の品格であると言われこのAIが積まれている車は止まるだけが能ではなくそれが王者というものだという例え話を聞く夢を見た。これは一階目覚めたときに覚えていた夢を瞬時にメモって再び眠りについたものなので、まったく記憶にない。
夢の記録に熱中していたところ、突然雨が降ってきて今日の予定がいきなり全部崩れた。ともかく天気予報サイトで雨雲レーダーを確認してみたのだが、雨雲の動きがむちゃくちゃで予測も不可能であり、一寸先は闇という感じで激しく動揺してしまい、その結果宅録が元禄に見えるなどした。結局その雨はしばらくでやんだのだが、それからインターネットニュースを読んでいても気が気ではなく、「被害総額10億円超(英)」とか「主婦(夫)」がことごとく(笑)に見えていまう。いや、それはおれにかかっている呪いなので常にそう見えてるわけだが、とにかく気付けばさっきの強めの通り雨みたいなやつを出かけているときに食らったら間違いなく不機嫌になるななどと考えてしまっていて、肝心のニュースの内容が全然入ってこない、と思ったらまた雨、という調子で、まるで冬の天気のようだった。日本中が晴れのときに北陸だけ雨なんだが、雑誌の予約電話になるのかよなどと恨みを募らせていたら階段に蜘蛛が出たので鈍器で殴られたような気持ちになった。偶然コンセントに近い位置に出現したので、モップのゴミを吸う用途の、サイクロンではない掃除機で吸って、そのあとキンチョールを吸わせて放置した。安らかな死を……。
とにかく出かける直前まで空がめちゃ暗だったし、元々三時までに天気が回復しなかったら出かけるのやめるつもりだったし今日のお出かけは中止するか〜〜と出かけるの諦めたら、途端に空が明るくなってきたので出かけた。天気はおれをどういう気持ちにさせたいんだ? まず新竪に行ってみるとあんまり変化がなかった、が計量の本が埋まっていることに気付いたので購入、その後ちょっと遠いがブックオフに向かってみたのだが、そっちには何もなかった。で帰宅して自室に入ってから、書店での予約行動を、書店の直前にある横断歩道を渡る前までは忘れてはいけないとこころの中で復唱までしていた書店での予約行動を完全に忘れていたことを思い出したので、アアッとなって荷物をおいてすぐさま電話で予約した。どうしておれの頭は何も記憶できないのか? どうしておれの性格は最悪なのか?? 答えてくれ……!!
今日は深夜になっても、二日前に買った商品すら記録してないという状態で、なーんて怠惰なんだと呆れてしまったが、総括してみれば何もやってなかったわけではなく、昨日は読書メモを、今日は音楽を作りしかも完成させていた。できなかったことを過大評価しているわけだ。しかしできなかったことをできていたことにもしたいんだ。あと窓を開けていたのだが無風であり全然室温が下がらなかったので窓を閉めて冷房つけて、ゆっくりと酒を飲んで何もかもが終わった。