ぐ戒

午前十一時の起き抜けには、紅葉に体を侵されて死ぬ女から遠ざかる夢を見た。なんか若干覚えているけど、こわっと思って忘れようとしたのでそれほど強く覚えてない。あと、三階ぐらいからしかスラムの建物に地元の若者が侵入していたのでおれも見張りの役割を捨てて一緒に突入する夢を見た。こっちは逆に面白かったんだけどあんまり覚えていられなくて悔しい夢だ。今でもこの場面だけは鮮明に思い出せるんだけど、この前後に何があったかはまったく思い出せない。あとあと、森の奥で実験映像を師匠に見せ合っていたんだけど少女のものよりおれの映像の方が出来が悪いということで帰されてしまい車の後部座席に揺られていると街で暴れてひとを轢き殺しているモンスタートラックのニュースが流れてきてそれをおれはタブレットで見て大変だなあと思っていたんだけど橋の上で暴れているトラックはさっきの少女がリモコンで操っているんだが街で暴れている方はおれがまさにこのタブレットで操っているし橋の上とかよく落ちないなーと感心しながらもおれも映像がないので街でトラックがどのように動いているかはまったく分からず勘で動かしているだけだししかもスワイプする動きを感知してトラックも動くので記事などを見ていると全く予測もしない方向に動くから実質制御不能なのだが今からその街におれの乗せられているこの車が入るということでおれがトラックを動かしていることは秘密だしなんとかトラックがこっちに来ないように動かそうと思っていたら急にスーパーに用事があるとかいって駐車場に車が停められて閉まったのでおれがトラックに轢き殺されてしまうと騒いでいたが大丈夫だよと適当にあしらわれてしまったのでせめて車の中ではなくてスーパーの中に行きたいとついていくことにして車のドアをバタンと閉めて鍵かかってるか引いて確認したらビービー警告音が鳴り始めたし慌てて運転手に報告しに行ったら今度からガチャガチャやるなよと叱られたし今のうちにモンスタートラックを正義の味方が倒したりしてくれないかなと考えていたんだけどもしそうなったら証拠が残っておれが警察に逮捕されてしまうし少女のトラックが暴れている橋まで移動して海に落としたら証拠隠滅できそうだがまさにその少女のトラックが邪魔だなと思案しているうちに誰かが橋から見える海から突き出た電波塔を倒してくれればいいんだよなという願望を抱き始めそれはコントロールを奪えば楽だよと脳内に直接流れるチャットで教えてもらったし実際海の属性が分かれば大雨による部屋への浸水が察知できて助かるとも言われたんだけどおれ自身が室内で溺れそうだと返事したら少女の姿をしたシミュレーターにおれが入ることになり常に部屋の九割に水が入っておりときどき完全に水が入っては引くという状態で完全に溺れておりしかもこれなら外に逃げても無駄っぽいから一旦時間を巻き戻して大雨になる前に離れに移動したんだけどそこの鍵がかわいい豚の顔のフタで覆われており何これと家族に質問したらフタの鍵を外しに来たけどそのフタ自体には鍵も何もかかっていなかったので軽く引くだけで外れてしまいいちいち呼びつけに行ったことが恥ずかしくなる夢を見た。これはすごく長くてすごく良く覚えている夢。水没したところはまさにおれが今住んでいる家の和室だった。
とにかく起きてからずっとヒヨドリがギャーギャーうるせえんだけどオナガに比べたら全然だし我慢しながらインターネットニュースを読み漁った。つーか、何はともあれ「作品に罪はない」という話が盛り上がっている。後でもう一回書くけどおれもそれのかなり原理主義的な考えを持っているんだよね。しかしそれはさておき、それ関係のニュースを掘っていると、あのマイケル・ジャクソンまでもが今、性的虐待疑惑が持ち上がって一部番組から映像や楽曲が引き上げられているという話を目にする。これは本人が死んでいるからフェアではないと財団が言っているらしい。まあそうかもしれん。でも、さすがにマイケルの作品が業界から完全放逐みたいな憂き目にあったら、アメリカ人も気付いてくれるのかな、こんな過剰なモラルに意味はないってこと。ところで天気的には今日も不安定で、何かツイートするべきことがあったんだけど、雨が降ってきたんで雨だ雨だと騒ぎながら慌てて一階の窓を閉めに行った、そして部屋に戻ってくると日の光が差し込んでくる、なんだなんだ太陽だ太陽だとなってまた窓を開けに行く、ほうほうの態で戻ってきたらツイートすべきことを完全に忘れていると、こういったことがあったのでじぶんはどうしたらいいのかという気分になっていた。というか、雨雲がこんなにあって実際に雨も降っているのに晴れの予報を出すのがお前らのやり方か ? なあ、気象庁……。出かける前には東南アジアニュースを読んだけど、タイの報道はわざわざ「元暴力団員とみられ、小指が切断されている」などと書いてくれるのでいいですね。
今日は街の方に出かけた。新竪は商品の入れ替えがあんまりなくて速やかに踵を返した。そしたら次はガレージだな。ここでは前からあって、買うべきかどうか悩んでいた本を、ついに買うべきタイミングが来たのではという予感が迫ってきたが、ひとまず置いておき、マンションをチェックしようという運びになった。しかしそのマンションに欲しい算数や数学の本が四冊もあったので購入しちゃった、のでガレージの本は必然的に諦めることとなった。マンションの古書店で買い物するとき、小銭を出すのに手間取っていたら、金がないと思われたのか「値引きしましょうか?」と言われたので好感度が上がった、とはいえ別に古書を買うぐらいの金がなかったわけではないので正直に値引きを断ってお金を払った。なんで小銭を出すのに手間取ったかというと五十円玉が二枚あったからで、ただ冷たく値引きの申し出を断るのもまずいと思って「いや~五十円玉が二枚あったんで」と言い訳をしたんだけど、喋るのが上手じゃないのでゴジュエダマガニマヒみたいに口がもつれて何もうまくいかなかったし、帰り道で、どうしてあんなことになっちゃったんだろう、おれの舌は一体……という虚しさを噛み締めていた。
帰宅してからさあ、薬物報道ガイドラインってのを読んだけど、これってなんで薬物に限定してるんだろ? もしガイドラインが正しいならすべての事件についての報道がそうあるべきじゃん、例えば痴漢も依存症的にやっているひとがいて治療もできるというニュアンスだったと思うが。まさか直接的被害者がいないから薬物犯罪は特別とでも考えているのだろうか。こういう、薬物犯罪には被害者がいないから被害者がいる犯罪より倫理的にマシという考え、個人的には嫌いなんだよな。違法薬物は暴力団の資金源になってるしツーステップぐらいで被害者にリンクするわけだし。とはいえ、おれが言いたいのは、「だから全部の作品を等しく潰せ」とか「ピエール瀧みたいな薬物犯罪者だけは特例で作品を潰さないようにしよう」じゃなくて、「どんな犯罪者の作品にも罪はないから平等に作品を潰すな」ということなんだよね。そこを勘違いされたくない。おれが原理主義的な考えを持っているというのはそういうところだ。基準を様々に設けると、絶対に合意が取れない。特に痴漢辺りが強めのフックになるんじゃないかな。あと、万引きも依存症的にやっちゃうひとが最近ニュースに出てたよね。